用語
目的変数
適切な時期の予防接種行動
6ヶ月までに「BCG」を摂取、かつ1歳6か月までに「三種混合(Ⅰ期初回3回)」、かつ1歳~1歳6カ月の間に「麻疹(MRも含む)」を摂取している状態と定義
説明変数
個人レベル
「かかりつけ医がいるかどうか」、「児の性別」、「出生順位」、「出産時の母親の年齢」、「経済的状態」、「母親の就労状態」
地域レベル
「市町村の小児科医師数」、「市町村の診療所数」、「予防接種率向上の取り組みの充実」、「かかりつけ医確保の取り組みの充実」、「予防接種の状況についての情報の利活用の有無」
分析方法
市町村レベル(n=430)の分散を考慮したマルチレベル・ロジスティック回帰分析
モデル1
説明変数として個人レベルの要因のみを投入
モデル2
モデル1に、説明変数として地域レベルの要因「市町村の小児科医師数」と「市町村の診療所数」を加えた
モデル3
モデル2に、説明変数として地域レベルの要因「予防接種率向上の取り組みの充実」、「かかりつけ医確保の取り組みの充実」、「予防接種の状況についての情報の利活用の有無」を加えた
結果
個人特性と予防接種行動
- 予防接種実施
- 88.3%
- かかりつけ医がいる
- 91.9%
- 出生順位
- 第一子が最も多い(46.6%)
- 出産時の母親の年齢
- 30歳~34歳(34.9%)
- 経済的状況
- 普通(55.7%)、やや苦しい(25.9%)
- 母親の就労
- 非就労(48.7%)、就労(23.6%)
調査をした430市町村の特性
- 15歳未満人工の中央値
- 5,409人
- 平均出生率
- 7.28
- 小児科医師数(15歳未満人口1,000人対)の平均
- 0.73
- 予防接種向上の取り組み
- 72.3%(311/430)の市町村で充実した
- かかりつけ医確保の取り組み
- 20.9%(90/430)の市町村で充実した
ロジスティック回帰分析の結果
- かかりつけ医がいない群はいる群と比較して適切な時期の予防接種行動のオッズ比が0.45と低かった
- 出生順位が第1子と比べると、出生順位が遅いと適切な時期に予防接種行動を取るものが少なかった(第2子:0.56、第3子:0.38、第4子以降:0.23)
- 母親の出産時の年齢では、30歳~34歳の母親と比較して、その群より若い母親で少なかった(19歳以下:0.17、20~24歳:0.38、25~29歳:0.74)
- 非就労の母親と比べて、常勤の母親で少なかった(0.52)
- 経済的な状況では、普通と回答したものと比べると、やや苦しい、大変苦しいと答えた者で少なかった(それぞれオッズ比は0.86、0.66)
- 小児科医師数が多いとオッズ比が高くなる傾向は見られたが、統計的な有意差は見られなかった
- 診療所数と予防接種行動の間には統計的に有意になる関連は見られなかった
- 予防接種に関する情報の利活用は、行っている市町村で適切な時期の予防接種行動をとる者が少ない結果であった(0.84)
考察
- 市町村の予防接種情報の利活用は、適切な時期の予防接種の完了と負の関連が見られた。このことから、適切な時期の予防接種行動の少ない市町村では予防接種を促すために、予防接種情報を活用している可能性が考えられる(反対に予防接種情報を利活用している市町村ほど予防接種行動が少ないと言えないだろうか?)
- 本研究の結果は、出生順位が遅いこと、低所得、母親の就労が予防接種の未接種または未完了のリスクという先行研究の結果と同じ結果を示している
- 不十分な接種のリスクのある家庭には、たとえば個別のリマインドを増やすなどの特別な配慮が必要である
- 欧米の研究では、予防接種対象者への電話、郵送物、テキストメッセージによるリマインドが、個人の予防接種行動を促し、予防接種率の向上を示している
- 一度のリマインドより、複数回のリマインドで予防接種率が上がるとの報告もある
- 全国規模で、対象者をランダムに抽出(442市町村において約27,000人)した本研究は、地域的な偏りがない研究である
結果
乳幼児期にかかりつけ医を持たないこと、若年の母親、出生順位が遅いこと、経済的困難、母親の就労が、不十分な予防接種行動の要因であり、そういったリスクのある過程への特別な配慮とかかりつけ医の確保ができるような環境整備が必要と示唆された
0 件のコメント:
コメントを投稿